2005年11月9日
ニューヨークやロンドンにおいては、そこで行われるビジネスの規模に相応する数と内容の(国際商事)仲裁が行われていると言えるが、日本においては、…にすぎない。また、日本で行われるべき仲裁事案が、日本を避けて香港・シンガポールで行われるような事態になれば、これに伴いビジネスも日本から逃避していくことにもなりかねない。このような点からすれば、日本で仲裁が行われ易くするする法的インフラを整備する必要があると思われる。(内閣官房司法制度改革推進準備室が平成13年11月に実施した仲裁法制に関するアンケート集計結果中の意見)
柔軟な紛争解決を指向する仲裁・ADR(裁判外の紛争解決手段)は、諸外国においても高い評価を受けているほか、仲裁は、労働、建設、住宅、公害、土地収用、電気通信事業といった幅広い分野の紛争において利用されることが予定されている。
そして、日本商事仲裁協会、日本海運集会所、各弁護士会仲裁センターをはじめとして、わが国では関係者の努力により多数の仲裁機関・ADR機関が活動を行うに至っている。また、仲裁及びADRに係る法令の整備も、UNCITRAL模範法に準拠した新仲裁法が施行された上、裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律(いわゆるADR促進法)も昨年12月に制定され、平成19年4月の施行が予定されている。
しかしながら、仲裁及びADRに関する法的インフラの整備は、組織や法令の整備によって完結するものではなく、制度を実際に運営していく優れた仲裁人・ADR手続主宰者の存在が必要不可欠である。
われわれは、仲裁・ADRを利用し、仲裁法やADR促進法の立法に際して意見を述べ、また、仲裁機関・ADR機関の運営に携わるなどしてきたものであるが、その過程において優れた仲裁人・ADR手続主宰者の必要性を痛感し、仲裁人・ADR主宰者が組織的に研鑽・研究を行い、また、知識及び経験を共有する機会を設けることがわれわれに課された責務であると考えた。
そこで、われわれは、平成15年10月16日、日本仲裁人協会を設立し、仲裁・ADRに関し、仲裁人、調停人、その他仲裁及びADR関係者の養成・研修、法律・実務の研究及びより良いADRの開発、並びに、実務家、研究者、その他仲裁又はADRに関心を有する者相互の連絡及び協力の促進により、仲裁及びADRの普及・啓発を図ることを目的として活動を開始した。日本仲裁人協会は、着実にその歩みを進めているところであるが、その活動基盤をより強固にするために、今般、社団法人日本仲裁協会の設立を行う次第である。