理事長就任のご挨拶
社団法人日本仲裁人協会は、任意団体だった草創期を含めると10年の歴史を経ることになりました。谷口前理事長と森事務局長のご尽力で、新法の下、一般公益法人化の準備も着々と進んでいます。この重要な節目の時機に、第三代理事長を拝命しましたことは感慨無量です。
私は、昨年12月末で国際法曹協会(IBA)の会長を退任しましたが、それまでも10年近く、事務総長や副会長などIBA本部役員を務め、文字通り世界中の法律業界を飛び回ってきました。その中で多くのことを学びましたが、とりわけ各国、各地域における仲裁制度の発展ぶりは印象的でした。日本でも、社会の理解も広がり、案件数も着実に伸び、とりわけ、若手の仲裁法専門家が多数育ってきています。しかし、それにも拘らず、他国、特に近隣諸国と比べても見劣りがする現状はまことに残念です。現代社会における司法に代わる紛争解決制度の重要性という点からみても、国際化社会の普遍的紛争解決方法であるという観点からみても、日本の現状はまだまだ満足からは遠いものです。
折しも我が国は、TPP(環太平洋経済連携協定)体制下、広範な経済・社会活動の国際化の時代に入ろうとしています。国境を越えて企業活動が広がるTPP体制下においては、いわゆる条約仲裁と言われているものだけではなく、それ以上に、多数の国際取引や国際投資の紛争が日常的に国際仲裁に委ねられることになります。国際仲裁は、TPP体制の不可欠の法的インフラだと言っても良いでしょう。そのインフラの建設に日本の法曹界のリーダーシップが求められます。そのために日本仲裁人協会の果たすべき役割が一段と重要になることも明らかです。
先日、理事長就任の挨拶に谷垣法務大臣をお訪ねした際に、TPP時代における仲裁の重要性に話が及びました。さすがご自身が弁護士であられる大臣、即座に問題点をご理解され、「それは重要な問題だ。茂木経産大臣や甘利担当大臣にもお伝えしましょう。」とまで言ってくださいました。大臣のこのお言葉で、私たちも、大いに励まされ、使命感を新しくしたのでした。
日本にも仲裁新時代を開く時が来たのではないでしょうか?私も微力を尽くすつもりですが、当協会の会員諸兄、関係のみなさまの倍旧のご支援を賜りますよう、挨拶に代えてお願いする次第です。
2013年4月吉日
社団法人日本仲裁人協会
理事長 川村 明