公益社団法人化にあたっての理事長ご挨拶

仲裁マーケットのアジア・シフトとJAA

公益社団法人 日本仲裁人協会
理事長  川村 明

私たちの日本仲裁人協会(JAA)も設立後約10年、今年から公益社団法人の認定をうけて、いわば法律的に格上げされましたが、そのJAAを取り巻く仲裁法環境もすっかり様変わりしています。仲裁マーケットのアジア・シフト、あるいはアジアでの国際商事仲裁ブームとも呼ぶべき状況です。

古くから多数の仲裁実績を積んできた香港や北京・上海に加え、近年、シンガポール、クアラルンプール、ソウルなどにも国際仲裁センターが設置され、我が目を疑う程の多数の仲裁案件を集めるようになっています。特に目覚ましいのはシンガポール(SIAC)です。

SIACは設立後まだ10年あまりですが、2012年度に235件、2013年度には259件の新規案件を受けたと言います。常時、数百件が係属していると言います。シンガポールは、今や、アジア、太平洋地域だけではなく、中近東からアフリカの国際商事紛争解決センターの役割を果たしつつあります。これを黙視して、手を拱いていることが国益に沿わないことは疑う余地もありません。

今や、TPPやFTAの国際法的ネットワークが広がり、日本人や日本の企業も広くクロスボーダーに展開することを迫られています。大商社や大企業だけが国際進出する時代ではないのです。ところが、その国際的な企業活動の場において、日本人に納得できる紛争解決、法の支配が保証されているとは言えません。日本の企業は、この国際競争の場に、いわば無防備で押し出されていると言っていいでしょう。当面、この問題に答えうる唯一の紛争解決方法が国際商事仲裁であります。

JAAは、経済産業省の諮問を受けて、ICSID仲裁と国際仲裁センターについて調査を実施し、先月(2014年3月)、大部の報告書を提出しました。私は、この調査報告が日本の国際商事仲裁改革への目に見える第一歩になると深く自負しています。日本の仲裁センター、日本商事仲裁協会(JCAA)とともに、この時代的課題に取り組んでいくのが、当JAAの責務であると考えています。

この時にあたって、JAAは、公式ウェブ・ページの大改造に取り組んでいます。上記の報告書は経産省のサイトに公表されると聞いていますが、その時には直ちに、当JAAのサイトからリンクされるようにするつもりです。こうして、広く内外の関連サイトとリンクさせることによってJAAのインターネット・サイトを日本の商事仲裁の情報センターとして育成していきたいと考えています。

JAAの会員諸兄姉のご支持、ご協力をお願いする次第です。

(2014年4月15日)